英雄ポロネーズの思い出

YouTubeに定期的に動画を投稿し始めて2年が経ち、昨年から収益化も達成しました。いつもご覧になって下さっている皆様のおかげでここまで続けることができました、本当にありがとうございます。

そして今回でとうとう、100曲目の投稿となります。節目となる投稿なので、何の曲にしようか色々と迷いました。皆さんが喜んでくれるような有名曲で、自分にとっても思い入れのある曲…。

悩んだ挙げ句、ショパンの英雄ポロネーズに決めました。雄壮で華やかなテーマは多くの皆様に愛されていることと思います。そしてこの曲には、個人的な思い出があります。

私が初めて英雄ポロネーズに取り組んだのは小学6年生の時。高校生の時に開いた初リサイタルでもプログラムに入れましたし、その後も折に触れて弾いている大切なレパートリーです。そして、中学生の時に初めて海外の先生のレッスンを受講した際に見てもらったのが、この曲でした。その時に見てもらったのはアンナ・カントール先生。あのキーシンの恩師としてよく知られている方です。

まだ中学生で、普段習っている先生以外のレッスンを受けるのは初めてのこと、さらに海外の大御所の先生ということで、喉から心臓が飛び出るくらい緊張していたのをよく覚えています。そんな私に対してカントール先生は、「緊張しなくて大丈夫よ、あなたはポロネーズのことをよく理解できているわ、大丈夫、大丈夫。」と、優しく抱きしめてくれました。

もちろんピアノの指導自体が素晴らしかったことは言うまでもありませんが、彼女のあの全てを包み込むような優しさ、それでいて鋭く本質を見抜く目線、そういったものが、キーシンを始めとする多くの一流ピアニストを育て上げたのでしょう。たった一度だけのレッスンでしたが、私の人生に計り知れない影響を与えたのは間違いありません。

カントール先生は昨年98歳で亡くなってしまいましたが、彼女が遺したたくさんのものは確実に、今もこれからも生き続けることでしょう。

英雄ポロネーズ