9/26リサイタル

2015年9月26日(土)に、ピアノリサイタルを開催いたします。詳細は以下の通りです。

場所: 東京・日暮里サニーホールコンサートサロン
時間: 17:30開演(17:00開場)
料金: 全席自由 2,500円
プログラム:
J.S.バッハ:トッカータ ト長調 BWV.916 
ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 op.35-2
ラヴェル:道化師の朝の歌
ラフマニノフ:音の絵 op.39-5
ショパン:舟歌 op.60

曲目解説

J.S.バッハ トッカータ ト長調 BWV.916
 「音楽の父」として知られるバッハは、18世紀以降に発展していく西洋クラシック音楽の基礎を作り上げた作曲家として重要な存在であり、例えば彼の代表作の一つである「平均律クラヴィーア曲集」は音楽の旧約聖書とも評される。
 彼が作曲した鍵盤楽器のためのトッカータは7曲あるが、このト長調のトッカータはその中でも少し例外的であり、北ドイツにおいてそれまでに確立されていたトッカータの書法と、急緩急の3楽章から成るイタリアの協奏曲の形式が混在するものである。爽快に駆け抜けるパッセージと緻密に絡み合っていくポリフォニーが見事。

ブラームス パガニーニの主題による変奏曲 op.35-2
 バッハ、ベートーヴェンと共に「三大B」としてドイツ音楽史に君臨するブラームスは、ベートーヴェンらの後継者として古典的な様式を受け継ぐと同時に、新たなロマン派音楽の扉を開いた先駆者でもある。
 本作は、当時の世界一のヴァイオリンの名手として名高かったパガニーニの「無伴奏ヴァイオリンのためのカプリース第24番」を主題とした変奏曲であり、ブラームスの他にもリストやラフマニノフなど多くの作曲家が同様の作品を残している。世紀の難曲とも言われ、極めて高度な技巧が要求される悪魔的作品である。

ラヴェル 道化師の朝の歌
 ラヴェルはドビュッシーと共にフランス印象派を代表する作曲家である。本作は組曲「鏡」の第4曲であり、ラヴェルの母の祖国でもあるスペイン風のくっきりとしたリズムが特徴的。濃密な異国情緒と、連打や重音グリッサンドなどのピアニスティックな技巧に彩られた名曲である。
 道化師の華やかな踊りと共に賑やかに曲は始まるが、突然静かになり、不安で寂しい中間部が訪れる。最後には再び笑顔の道化師が舞い戻り華麗に締めくくられるが、中間部で垣間見せた彼の悲哀が印象に残る。ここで描かれている道化師は、洗練された、それでいて繊細な伊達男なのである。

ラフマニノフ 音の絵 op.39-5
 ラフマニノフはチャイコフスキーと共にロシアロマン派を代表する作曲家である。ショパンの旋律美とリストの技巧を兼ね備えた、と形容されるように、彼の作品は西欧の音楽理論を継承しその上に立脚したものである。一方で、スラヴ民族の血を色濃く反映した憂愁、正教会聖歌やロシア民謡の影響、聖堂の鐘の音を模したと言われる和音が、ショパンやリストとは一味違う彼独自の雰囲気をその作品にもたらしている。
 全体的に超絶的な技巧を要求される絵画的練習曲集「音の絵」は現代ピアニストの重要なレパートリーの一つとなっているが、今回はその中からop.39-5を取り上げる。情熱的な旋律と、いかにもラフマニノフらしい重厚で複雑な和音が特徴的である。

ショパン 舟歌op.60
 ショパンはポーランド、そしてロマン派を代表する作曲家である。「ピアノの詩人」として知られている通り、彼のピアノ作品における旋律の美しさは筆舌に尽くしがたく、また形式や技巧においてもピアノ音楽の新たな地平を切り拓いた、偉大な音楽家である。
 舟歌は最晩年に作曲された、ピアノ独奏曲としてはショパン最後の大作であり、深い精神性を要求される難曲でもある。次々に調性の移り変わるどこか不安定な序奏に続き、特徴的な音型の伴奏が左手に登場する。この左手は最後まで一貫して本作の骨格となり、波に揺れるゴンドラの様子を表情豊かに表している。太陽をいっぱいに浴びてキラキラと光り輝く海や、低いうなり声を上げて押し寄せる波、河の支流に迷い込んでしまったかのような描写も経て、絢爛豪華なコーダにおいて我々を乗せた舟はいよいよ大海に漕ぎ出す。
 このように風景描写として聞いても素晴らしいのだが、その裏にはもっと深遠な何か、たとえば人の生そのものが見え隠れしているように私には感じられる。忍び寄る死の影と孤独の中で、ショパンは何を想い舟歌を紡いだのか。本作は長調でありながら、常にどこか物悲しい。

九月リサイタルチラシhen

皆様、ぜひお越し下さいませ!

リサイタル開催にあたって、主催の東京国際芸術協会さんのブログにインタビューを掲載していただいたので、こちらでも引用させていただきます。

―今回のリサイタルに向けての抱負を教えてください。
 このたびは東京国際芸術協会様よりリサイタル開催の機会をいただき、とても嬉しく思っております。今回の会場である日暮里サニーホール・コンサートサロンは、これまでに私がリサイタルをやらせていただいた中でも最もコンパクトなホールですので、それこそ名前の通りサロンのように、お客様一人ひとりの存在をとても近くに感じて演奏することができるのではないかなと、楽しみでもあり緊張感もあり、といった気持ちです。ここ最近はコンチェルトや室内楽の公演が多かったので、久しぶりのソロでのリサイタル、気合十分で臨みます!
 
―演奏される曲の聴き所などを教えてください。
 今回は、バッハからラヴェルまで幅広い時代と地域の作品を取り上げました。一口にクラシック音楽と言いましても、その中身は実に多種多様。バッハの数学的とも言えるような緻密な構成・響きに対して、ラヴェルはこれぞフランス印象派!というような軽妙洒脱でユーモラスな音楽ですし、ロマン派の作曲家たちは自分の内から湧き出る感情をそのまま楽譜に書き起こしたかのような情熱的な音楽です。そういった作曲家それぞれの個性を弾き分けて、一晩の公演でクラシックの色々な魅力を皆様にお伝えできれば、と思っております。
 
―あなたにとって音楽とは何ですか。
 私にとって音楽はある種の言葉のようなものです。世の中にはどんな言語でも語ることのできないものがたくさんあって、そんなとき私は音楽の力を借りて、語り得ぬ何物かを表現しようとします。以前、「正しい」演奏とはどのようなものか悩み袋小路に迷い込んでしまったことがあったのですが、そんなものはないんだ、もっと自分自身の言葉で歌っていいんだ、と気付いたとき、私はようやく自由になることができました。今回のリサイタルでも、私らしい、私ならではの音楽を皆様にお届けすることができれば幸いです。